アドテクノロジーの変遷とよく使われる用語

こんにちは。技術広報の丹野 (@tan2) です。

今年は書籍『Engineers in VOYAGE 事業をエンジニアリングする技術者たち』が発売され大きな反響をもらったことが一番印象に残っています。そこでVOYAGE GROUP Techlog Advent Calendar 2020の9日目として、書籍からの抜粋を掲載したいと思います。

VOYAGE GROUPの事業の柱の一つにアドプラットフォーム事業があります。 ほとんどの方がインターネット上で広告を見たことがあると思いますが、一方、その仕組みや歴史的変遷、用語などについては馴染みが薄い方も多いのではないでしょうか。

今回は、VOYAGE GROUPのインターネット広告への取り組みと合わせて、ラムダノートさんの許可を得て書籍から2つのコラムを引用する形で、アドテクノロジーと言われる技術の変遷やよく使われる用語を解説したいと思います。

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なぜインターネット広告に取り組むのか

人々は仕事でもプライベートでも多くの時間をスマートフォンアプリの利用やウェブページの閲覧に費やしています。そのため多くの自社製品をマーケティングしたい企業にとってそのインターネット広告のチャネルは年々重要度を増しています。また広告収益がメディアの大事な収益源の一つになっていることで、人々は一部のアプリやサービスを無料で利用することができています。

このように、現在のインターネット産業を支えている大きな柱の一つは、広告とそのエコシステムです。この市場は毎年成長を続けている一方、まだまだ課題も多く、この領域を改善していくことには大きな意義とチャンスがあると考えています。

アドプラットフォーム事業とは

VOYAGE GROUPにおけるアドプラットフォーム事業とは、インターネット上に広告を出して人々にマーケティングしたい「広告主」と、広告を掲載して広告収益を得たい「メディア」の間に存在しており、アドテクノロジーを駆使することで「広告主」と「メディア」双方の利益を最大化しながら、「人々」に価値の高い広告を表示することでユーザー体験の向上にも寄与する事業です。

アドテクノロジーの変遷とよく使われる用語

「第1章 fluct:広告配信の舞台裏の技術者たち」より

アドテクノロジーの変遷

 インターネット広告における広告配信は「純広告」から始まりました。純広告配信では、メディアが広告主や広告代理店に広告枠を直接販売します。

 メディアの広告枠が増え、配信される広告案件も増えていくと、それらの組み合わせの数が多くなります。 それに伴い広告価格の算出時に考慮が必要な条件も徐々に増えました。 そして、CPM(Cost per mille)と呼ばれる「1000回の広告表示あたりの費用」を計算したり、1日あたりの配信単価に上限を設定するルールに対応したりするために、 メディアにおける広告配信および管理のための仕組みが必要になってきました。そのための仕組みは「アドサーバー」などと呼ばれるようになります。

 さらに2010年代に入ると、「運用型広告」が盛り上がり始めます。ここで普及したのが> 「アドネットワーク」および「RTB」(Real Time Bidding)という仕組みです。

 アドネットワークは、複数のメディアおよび複数の広告主と契約することで両者を取り持つ仕組みです。アドネットワークと契約することで、メディアは毎回すべての広告主と契約しなくてもよくなります。 その代わり、アドネットワークが広告主から配信手数料を受け取り、メディアに広告掲載料を支払います。 アドネットワークがメディアから広告枠を預かり、複数の広告主から依頼された複数の広告案件を、従来の広告効果を保ちながら効率よく配信する役割を担います。

 もう一方のRTBは、ユーザーが広告枠のあるウェブサイトを閲覧するたびに、リアルタイムに広告を表示する権利が売買される仕組みです。 RTBでは、広告枠の管理をSSP(Supply Side Platform)が担当し、広告案件の管理をDSP(Demand Side Platform)が担当します。 ユーザーによるウェブサイトへのアクセスを契機に、広告枠に対する「入札」が自動的にサーバーにより実施され、その入札を勝ち取った広告が最終的にユーザーのブラウザに表示されます。

 RTBでは、ユーザーがウェブサイトを閲覧するたびに入札が実施されるので、それをさばくサーバーには高いトラフィックを高速に処理する能力が要求されます。 また、広告を出稿する広告主があらかじめ「どのような条件を満たした広告枠に、いくらで入札するか」などの条件を決めて設定する必要があるので、 入札を実施する「ビッドサーバー」だけでなく、その設定を行う「管理画面」の機能性も重要になります。 さらに、実際に「どの広告がいくらで入札を勝ち取ったのか」をあとからログとして「集計」できる機能も必要です。

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「第2章 Zucks:フルサイクル開発者の文化」より

アドテクノロジー業界でよく使われる用語

 インターネット広告の世界では、ほかの業界ではあまり馴染みがない概念や頭字語がいくつか用いられます。 いくつかは第1章にも登場していますが、ここで改めて概略をまとめます。

  • CPI(Cost Per Install): アプリなどのインストールを1件獲得するのに必要なコストを指す
  • CPC(Cost Per Click): クリックを1件獲得するのに必要なコストを指す - 純広告:広告主または代理店が直接メディアの広告枠を買い取って広告を表示させるもの
  • コンバージョン:広告配信の成果を指す。何を成果とするかは広告商材によって異なり、ECサイトであれば商品の購入、アプリの広告であればインストールが成果となる
  • :広告を配信する対象のメディアのこと。ここでメディアとは、ウェブメディアやアプリのことを指す
  • :広告枠のことを指す。面には複数の枠が存在する
  • 案件:日常的な意味では課題事項全般を指すが、広告業界では特に広告の注文や発注などのオーダーを指す

インターネット広告をエンジニアリングする

VOYAGE GROUPのアドプラットフォーム事業領域では、fluctやZucksといったチームがそれぞれの立ち位置からインターネット広告をエンジニアリングしています。そしてその様子を書籍『Engineers in VOYAGE 事業をエンジニアリングする技術者たち』で生々しく語っています。ご興味ある方は是非手にとってみてください。

書籍「第1章 fluct:広告配信の舞台裏の技術者たち」

第1章のfluctは、インターネット広告配信でメディア側の基盤となる「SSP」と呼ばれるシステムを開発運用している会社です。老舗SSPのシステム開発の軌跡をたどりつつ、アドテクを支える技術、オンプレミスとクラウドの双方におけるSREやDevOpsの考え方、技術的負債の返済に必要な腕力、オブザーバビリティ、広告とプライバシーの問題といった、インターネットで働く多くの人が気になっている要素が語られます。 https://www.lambdanote.com/blogs/news/engineers-in-voyage

  • 目次
    • 広告配信システムひとめぐり
    • 「2010年に広告配信システムを作る」ということ
    • とりあえず使ってみる文化
    • クラウドとの向き合い方
    • インフラと開発は最初から分離しない方針だった
    • 技術的負債との闘い
    • オブザーバビリティ
    • これからのfluct
  • コラム
    • アドテクノロジーの変遷
    • オンプレミスかクラウドか
    • VOYAGE GROUPの「グレード」と「技術力評価会」
    • インプレッションとそのカウント方式
    • SREに対する考え方
    • リファクタリングと作り直しの違い
    • オブザーバビリティ
    • 広告におけるプライバシーの課題
書籍「第2章 Zucks:フルサイクル開発者の文化」

第2章のZucksは、アフィリエイトやアドネットワークと呼ばれる仕組み、それにfluctが担うSSPと対をなす広告主側のシステム「DSP」を開発運用する会社です。広告配信という点だけを見るとfluctと似ていますが、最初からフルクラウドで実装されたこと、さらにはビジネス上の要件がまったく異なることもあって、開発者の文化もだいぶ様子が異なります。その開発文化を横軸にしながら、「フルサイクル開発者」というソフトウェア開発者の働き方が語られます。 https://www.lambdanote.com/blogs/news/engineers-in-voyage

  • 目次
    • アドネットワークとしてのZucks
    • DSP開始
    • Zucksのエンジニア文化
    • ドキュメントがまったく存在しないシステム
    • 新しくジョインしたら初日に機能をリリースする
    • 重要なのは切り戻しできるかどうか
    • チームの文化はスケールできるのか
    • 広告業界の変化に向き合う
  • コラム
    • アドテクノロジー業界でよく使われる用語
    • MVP(Minimum Viable Product)
    • フルサイクル開発者とは
    • Zucksのシステム構成
    • XPとケント・ベック

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