書籍「Engineers in VOYAGE 事業をエンジニアリングする技術者たち」が発売 #voyagebook

こんにちは。技術広報の丹野です。 2020年8月7日、『Engineers in VOYAGE 事業をエンジニアリングする技術者たち』という本が ラムダノートさん から出版されます。

テスト駆動開発でもおなじみの 和田(@t_wada)さん が、VOYAGE GROUPに在籍する主要なソフトウェアエンジニアにインタビューし、その内容をラムダノートの 鹿野(@golden_lucky)さん の協力のもと本としてまとめていただきました。 VOYAGE GROUPにおけるビジネスとソフトウェア開発の在り方を濃縮した1冊に仕上がっていると思います。

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Engineers in VOYAGE 事業をエンジニアリングする技術者たち 書影

さて今回は、この本ができた経緯や内容、雰囲気についてみなさんに伝えたいと思い、 和田さん と ラムダノートさん の許可を得て「はじめに」の内容を以下に掲載します。ツイートする際には、ハッシュタグ #voyagebook を使っていただけると嬉しいです。

author: 和田卓人 date: 2020年7月

はじめに

 今世紀に入ってから、ビジネスとITの関係は大きく変わりました。Marc Andreessenが"Why Software Is Eating The World"というタイトルの文章をウォールストリートジャーナルに寄稿してから9年が経ちます。世界を飲み込むソフトウェア化の波はインターネット企業から始まり、ソフトウェアから遠い伝統的産業にまで到達しました。新興企業はソフトウェアの力を活かして伝統的産業に参入し、既存の企業は新たな好敵手に対抗するためソフトウェアの力を獲得しようともがいています。ビジネスにとってITは、「あると便利」から「有効」、「不可欠」を経て「中核そのもの」になりつつあり、ソフトウェアのエンジニアリングを進める力は企業の競争力の源泉となりました。

 1999年創業のVOYAGE GROUPは、ソフトウェアの力を活かして成長してきたインターネット領域の事業開発企業です。20年間で100以上の事業やサービスを創出し、現在は広告プラットフォーム事業やメディア事業を中心に20以上の事業やサービスを運営しています。本書は、そのようなVOYAGE GROUPのさまざまな事業やサービスを牽引するエンジニアに2020年1月から2020年5月にかけて行ったインタビューを1冊の書籍としてまとめたものです。事業をエンジニアリングの視点で考えたり、さらにはエンジニアリングの視点で事業を作り出したりと、「ビジネス」と「エンジニアリング」を両輪にしてITシステムを開発・運用しながら実社会で活躍している技術者や技術者のチームの生の声をお届けします。

本書のきっかけ

 本書の企画は、もともと「VOYAGE GROUPのエンジニアをもっと多くの人に知ってもらいたい」というCTO小賀さんの想いから始まりました。同社のいくつかの事業会社のシステムを支えるエンジニアに取材した内容をインタビューとしてまとめ、それを技術同人誌のような形で頒布することが意図されていたようです。

  筆者は、同社の技術コーチを務めている関係から、この企画のインタビュアーを拝命しました。各事業会社のキーパーソンにインタビューを依頼し、ランチをともにしながら事前に聞き出したshow notesを手に本番に臨むと、そこで彼らが語ってくれたのは、現実の世界で次々に発生する問題やチャレンジングな目標を時には腕力、時には調整力、時には洞察力でもって解決していく、当事者意識と技術力を備えた技術者たちによる格闘の歴史でした。

 インタビューの内容を文章として書き起こす作業は、編集者である鹿野さんが引き受けてくれました。そうして生まれた文章は、一企業の技術者の認知度向上という当初の目標を遥かに超え、「事業をエンジニアリングしていく」というITシステムが事業の中核になった現代において普遍的なテーマについて当事者が語る貴重な証言を集めた内容になっていました。これは良い本になるという手応えを掴みました。「この本は多くの方にヒントを与える本であり、広く読まれるべきである」との想いから、鹿野さんの出版社であるラムダノートで書籍として発行するに至ったものです。

おすすめの読み方

 本書はさまざまな読み方ができる本です。すでに触れたように、本書のもともとの意図は「VOYAGE GROUPの名前は知っているものの、どんなエンジニアがどんなシステムを作っているかまでは知らなかった」という方に興味を持って手に取って読んでもらうことでした。もちろん、すでにVOYAGE GROUPに知り合いがいる方にも、一種のファンブック的に楽しんでもらえるでしょう。

 しかし筆者は、本書はそれ以上のものであると考えています。なぜなら、本書に登場するVOYAGE GROUPの複数のシステムには多くの方が「自分の扱っているシステムが置かれている状況に似ているな」と思えるような面がどこかにあり、したがって本書には「自分事としてとらえられる切り口」が必ずどこかに見つかるはずだからです。

 たとえば、大量のトラフィックをさばくためにエラスティックにスケールアウトしていく配信システムもあれば、複雑な情報を扱う管理画面もあります。オンプレミスで始まったシステムもあれば、最初からクラウドコンピューティング基盤を活用したシステムもあり、さらに最初からクラウドネイティブなマネージドサービスを使っているシステムもあります。散らかったデータの収集と前処理から着手して、現在ではデータサイエンスの力を活かしてリアルタイムの予測を導入しているシステムもあります。BtoBのシステムもBtoCのシステムもあります。ゼロから立ち上げて数年の若いシステムもあれば、20年もののレガシーシステムもあります。

 システムは事業の種類によっていろいろと姿形を変えます。そしてVOYAGE GROUPという会社では、さまざまなフェーズにある多様な事業を扱っており、強いエンジニアリング文化がそれを支えています。 したがって本書のどこかのページには、システムに携わっている方の多くにとってヒントとなる(あるいはアンチパターンとなる)逸話がきっとあるはずなのです。

 インターネット上で事業を営んでいる企業に属しているエンジニアの方々は、自社がこれまでに経験したことやこれから経験しそうなことについて、いろいろなステージの事業が登場する本書からヒントを見つけられるでしょう。アーキテクチャの変遷や技術的負債の返済の道のりなど、エンジニアリングの力によって問題を解決していくさまに共感しながら読めるのではないでしょうか。

 受託開発を行っているエンジニアの方々におすすめしたい本書のポイントは、インターネット企業のエンジニアたちの等身大の姿、事業に対する当事者意識、ビジネス上および技術上の意思決定のスピード感などを具体的に読める点だと考えます。それだけでなく、たとえば第3章のVOYAGE MARKETINGへのインタビューに顕著ですが、「SIの現場で培ったスキルのウェブ系のサービスでの活かし方」といった観点でも参考になると思います。

 さらに本書は、技術者だけでなく、ビジネスを営んでいる方々にもおすすめできます。それは、全編を通して「オーナーシップを持った技術者が事業をエンジニアリングする姿」を見られるからです。ビジネスとエンジニアリングが事業の両輪であるからには、エンジニアたちの考えを知り、彼らの気持ちを汲み取れることは、ビジネスにとって必須のスキルだといえるでしょう。

 特定の企業のエンジニアリング文化を解説する書籍はこれまでもありましたが、それらに登場するのはGoogle、Amazon、Facebook、Appleなど、技術者の数も多ければエンジニアリング的な体力もふんだんにあるメガプレーヤーたちです。VOYAGE GROUPは、それらメガプレーヤー企業に比べると遥かに規模が小さいにもかかわらず、強くしなやかなエンジニアリング文化を備え自分たちで問題を解決しながら日々前進している企業だと思います。その意味では、「あれらの企業はそもそも特別すぎるから」という先入観から離れ、より現実的で模倣可能なエンジニアリング文化を本書から読み取ってもらえるはずです。

書誌情報

書名: Engineers in VOYAGE 事業をエンジニアリングする技術者たち
著者: 株式会社VOYAGE GROUP 監修、和田卓人 編
サイズ: A5判、224ページ
ISBN: 978-4-908686-09-2
本体価格: 1,800 (+税) 円、電子版のみ1,000 (+税) 円
発行: 2020年8月7日

主要目次

第1章 fluct:広告配信の舞台裏の技術者たち
第2章 Zucks:フルサイクル開発者の文化
第3章 VOYAGE MARKETING:20年級大規模レガシーシステムとの戦い
第4章 VOYAGE Lighthouse Studio:数十万記事のメディアをゼロから立ち上げる
第5章 サポーターズ:事業の成長を止めない手段としてのシステム刷新
第6章 データサイエンス:エンジニアによるビジネスのための機械学習

購入について

ラムダノートさん で販売しています。

そのほか、ジュンク堂書店池袋本店をはじめ、書泉ブックタワー (秋葉原)、紀伊國屋書店新宿本店、amazon.co.jp などの書店およびオンライン書店でも順次販売予定となっています。

最後に

この本を通して、インタビュイーを務めてくれたエンジニアたち、そしてVOYAGE GROUPの文化や考え方について共感していただけたら幸いです。